これから始める編曲・後編

第7回・ストリングスアレンジ

Strings(弦楽器)のパートを自分の編曲に入れるのには一体どうしたら良いでしょう??ストリングスやブラス(弦や管楽器)などはそれぞれの楽器のキー(調整)も違うので譜面も高音部記号、アルト記号、低音部記号、などなど難しい!!と言うイメージが付きまといます。人に頼んでやってもらえたら楽だなぁなんて思ってしまう事もあります。実際私も弦のみアレンジを頼んだ事も、弦アレンジだけを頼まれる事もありました。

アレンジをする上で大切なのは、各楽器の特性を理解しておくことです。楽器の特性とは、各楽器の演奏方法、楽器の使用可能な音域等です。今回はストリングスセクションとしての楽器編成、ポップスなどで良く使われる基礎の演奏方法などをご紹介して行きます。

楽器編成について

まずはどんな楽器があるのでしょう??

高い方の音程から、
バイオリン
ビオラ
チェロ
コントラバス
が弦楽器になります。

殆どのレコーディングでは、コントラバスは呼ばずに
1stバイオリン(以下1stVln.)
2ndバイオリン(以下2ndVln.)
ビオラ(以下Vla.)
チェロ(以下Vc.)
という4パートで構成される事が多く、クラシックでもこの4人で演奏するカルテット(弦楽四重奏)という演奏形態での楽曲が多数あります。

それぞれの楽器の音域はMidiで言うところでは以下の通りになり、鍵盤のイメージです。
"…"で表記しているところは、実際には出せない音では無いけれども実用音域でない音のあたりである、と考えて下さい。最近のDTMのStrings系の音源は下から上まで限りなく出てしまう物もあれば、この音域にある程度忠実に再現している物もあります。この音域は何となくでも覚えていると便利ですので頭の片隅に入れておいて下さい。

演奏方法について

弦楽器の演奏法はとても表情豊かです。4本ある弦を弓でゆったり擦って弾いたり、素早く細かく弾いたり、短く切って激しく、楽しそうに聴こえる様に弾いたり、時には指で弾い(はじい)たりと様々です。そういう意味ではエレクトリックベースに似ています。ベースもピックで弾いたり、指で弾いたり、チョッパーと呼ばれる指で弾いたり奏法は様々です。

弦楽器の主な演奏方法には、レガート、マルカート、スタッカート、トレモロ、ピチカートなどがあります。

イメージとして、レガートは弓が弦の上を行ったり来たりしている(アップとダウンと言われています)中で弓を無理に返さないで(アップダウンを無理にしないで)音を途切れない様に滑らかに演奏する技法です。下の譜面のスラーで繋がっている部分になります。マルカートは逆に音符ごとに弓を返しながら演奏する方法になります。ハッキリと弾いてもらいたい場合はスラーを外します。

それでは、譜面で表したものが実際にはどのように聴こえるかを打ち込んだデータで聴いてみましょう!

レガートは音符と音符の間を開けずに。マルカートは若干音符を短めにしてあります。


いかがでしょう?後は耳で聞いて調整ですね。
KONTAKTシリーズの様に鍵盤の低いノートにキースイッチと呼ばれる音色切り替えボタンがアサインされているソフト音源もあるので、これを使って音色を切り替えながら調整する手段もあります。

編曲におけるStringsの役割とは?

演奏技法をご紹介しましたが、楽曲に対して実際のStringsセクションというのはどのような役割を果たすのでしょう?幾つかのパターンに分類してみました。

1、コードバッキングとしての伴奏
2、カウンターメロディとして使う(唄の裏のメロディ)
3、イントロ、間奏、エンディングなどメインのテーマなどの演奏

1、コードバッキングとしての伴奏

これは演奏方法に関係なく、レガートでもスタッカートでもピチカートでも多用されます。ピチカートからマルカートそしてレガートへと変化するトラックを聞きながら違いを感じてみましょう!

HipHopトラックな感じでLoopも足して行ってみました。基本的な動きも、演奏方法が変わる事によって随分と印象も変わるのが分かりますよね?

ソフトウェア音源でもキースイッチと呼ばれる、鍵盤に奏法を引き分けるスイッチ替わりの鍵盤を用意している音源もあります。

2、カウンターメロディとしての演奏。


この演奏の場合、唄のメロディに対する動きになりますので、4つのパートのどの楽器のカウンターメロディを聞かせたいのかをハッキリ意識してパートを組んで行く事をお勧めします。また、カウンターメロディの合間にはもちろん唄を邪魔しない様に①のコードバッキングをしてその場を凌ぎながら、次のカウンターメロディに繋いで行く事も多くあります。

カウンターメロディの役割としては、メインの唄により勢いを付けたり、情感を出したりする事を主に目的とします。唄が入る前にストリングスが駆け上がる様な演奏で勢いを付ける事もよくします。もちろん駆け下りたりもします。唄が伸びている所でメロディや音列で動いたりと様々な表現をして行きます。
ストリングス譜SilentSilen「恋い雪」より

各パートの役割として
1st Vln.カウンターラインのメロディ
2nd Vln. 1st Vln.のオクターブ下のライン
Vla. カウンターラインのハーモニー
Vc.カウンターラインのハーモニーか楽曲コードのルート音、または第2のカウンターメロディ

この辺りの編成が最もよく使われる役割ですが、時には1st Vln. とVla.がユニゾンをして(Vlaは1st Vln.のオクターブ下を演奏)2nd Vln.がハーモニーのラインを演奏する事も有ります。Vc.も新たなメロディを演奏し、Vlaがそちらのメロディに参加する事もあります。注意したいのは、唄ものの編曲の場合はストリングスだけでなく、一番盛り上がる所にはより多くの楽器や、コーラスなども参加する事が多いので、唄やコーラスと音や動きがぶつかってしまわない様に気をつけることです。唄が歌いにくい演奏になっていないか?常に心配りが必要です。これは人が目の前でウロウロされるととても気が散って集中出来ないのと一緒で、唄のメロディに近い所、リズムが細かく動いている所でストリングスがウロウロしていると歌う方はもちろん聴く方もどっちを聴いたら良いの??と分からなくなってしまいます。

3、イントロ、間奏、エンディングなどメインのテーマなどの演奏

この場合は唄に気兼ねなく思いっきり演奏してもらうイメージでストリングスを演奏させましょう!オールユニゾンと言われる、全員が同じメロディ(Vla.Vc. はオクターブで分かれてユニゾンする事が多いです)で演奏している様にしても良いですよね!また1st Vln.2nd Vln.のオクターブのメロディに対して、Vla. Vc.などがカウンターメロディを演奏して迫力を出す事も可能です!

DTMにおける弦楽器の表現

ここまでは主に演奏技法と、編曲の仕方についてお話いたしましたが、皆さんの悩みはこれだけでは有りませんよね?どうしたら打ち込みで生の弦楽器の様に聞こえるのか、DTMで表現するにはどうしたら良いのか・・・。

打ち込み方法は先ほどの音符の長さで調整や、弦楽器の音域の範囲外の鍵盤を使用するキースイッチなどで奏法を変更させることも必要です。音作りに関して、私は編曲のデモ作業では幾つかのストリングスの楽器(プラグインシンセMOTU SymphonicInstruments、KONTAKT SessionStringsPro、PROJECT SAM、VIENNA Strings等)を混ぜてストリングスパートを完成させます。それぞれのプラグインの楽器には特徴があるので楽曲に合わせて組み合わせやバランスなどを変更します。

各ストリングス音源の特徴をおよそ把握します。

• 弦楽器の人数感
• 弦楽器の音色の明るさ
• 部屋の広さ(ホールエコーと呼ばれる物で、コンサートホールや協会の様な所なのか?
室内楽っぽくこぢんまりしているのか?)
• 音の近さ(近い所にマイクが立っているのか遠い所で響きや空気感を重視しているのか?)

これらのイメージから楽曲に併せて演奏させるプラグインを選んで行けると良いと思います。バラードの様な楽曲、アップテンポで明るい曲、攻撃的なアグレッシブな曲等など、様々な楽曲に対してストリングスをどのように演奏させて盛り上げて行くのかという点も重要です。各パートごと(Vln1,2,Vla,Vcの4パート分)のトラックを用意しそれぞれの楽器の音の強さなど調整して行きます。ストリングス音源を幾つか重ねる場合、その分だけトラックも増やします。キースイッチなどの奏法の切り替え用のトラックを用意することでトラックはもっと増える場合があります。

ストリングスへのエフェクト処理

ストリングスのアレンジも済んで、さぁラフミックス!と言うときに、実はもう一手間エフェックトをかける事により、随分と印象が変わって来ます。今回は松岡卓弥君の4thアルバムの中の「EMERGENCY」のイントロ部分をミックスをお願いしたエンジニアの加瀬さんにより幾つか作り分けて頂きました。全てには当てはまるとは言えませんが、参考にして頂ければと思います。

ストリングスエフェクト無し

バンドサウンド風ストリングスエフェクト

ミックスされたバンドサウンド風ストリングス

バンドサウンドのストリングスエフェクトの各パラメータ

strings settings 1
リアルサウンド系のストリングスエフェクト

ミックスされたリアルサウンド系ストリングス

リアルサウンド系のストリングスエフェクトの各パラメータ

strings settings 2

第8回・コーラスアレンジとは?

一言にコーラスアレンジと言っても、実は様々なパターンがあります。

2人組などでハモってる(メロディに沿って上のパートや下のパートを同じ歌詞、同じタイミングで
歌う事を日本では意味します)とか歌のない所でウ〜ア〜などの歌詞でハーモニーを作り出したり、歌詞の大切な部分のみハモって後はウ〜ア〜とか様々です。もちろんコーラスグループの様に多彩なハーモニーで独特の世界を作り出したりすることも可能です。

アカペラと呼ばれる、歌のみで曲を表現したりするグループも数多く存在します。古くは教会音楽(ゴスペル、賛美歌)やオペラもそうですし、学校での合唱コンクールなどもコーラスでしたよね!ちなみに私の通っていた学校は校歌も混成4部と呼ばれるコーラスで毎日歌っておりました。それこそ朝礼で4曲、お昼ご飯前1曲、帰る前に1曲など・・・。

今回アレンジ講座では、大きく2つに分けて説明をして行きます。1つは字ハモと呼ばれる歌詞の有るもの、もう1つは歌詞のないウ〜ア〜物。大きな違いは何でしょう?それぞれの使われ方を紹介しながらその違いを実感して行きましょう!

その①字ハモ

メロディに対して同じ歌詞を歌いメロディの上や下にハーモニーとして付加するもの。歌い手が男性、女性によってハーモニーの付き方が変わる事がある。

○ 字ハモパターン1
メロディの3度上をハモる。
メロディに対し長3度、短3度上で動くもの。

○ 字ハモパターン2
メロディの3度下をハモる。
メロディに対し長3度、短3度下で動くもの。

○ 字ハモパターン3サンドイッチ型
メロディに対して上と下でハモる。
メロディとコードとの関係性によりますが、
上が3度なら下は4度になったり。
上が4度で下が3度になる場合も多くあります。

○ 字ハモパターン4
メロディに対して上に2つハーモニー、下に2つのハーモニーになるパターン。

歌い手によって変わる?

★字ハモ(本人?他人?)
これは明らかに歌い手の力量(唄が上手くてもハモりメロ取れない人も実際に居る)にかなり左右されます。元々字ハモは楽曲の一番盛り上がる所のサビ、サビ直前などに多く使われます。

ただし、コーラスワークを前提としたメロディのキー合わせをするなどと言う事は、レコーディングでもあまりしません・・・。実際は、唄を録り終わってから、さぁハモどうしよう??なんていう現場もかなり多いです。

その反面、声優さんのレコーディングなどではそこの辺りまで緻密にキー合わせをしてコーラスチェックも含め、予め歌詞もふった譜面などを用意する場合があります。

また、コーラスワークを専門に行うプロの歌い手さんも多くいらっしゃいますので、人数感を出したい場合などはプロの方の存在がとても重要になります。(この場合はWooAhコーラスなども一緒にダビングします)

男性ボーカリストの場合

★本人で行う場合は先ほど説明した通りですが、他の方々でダビングする際は構成メンバーは以下のパターンに分かれます。

○ 男性2人の構成

○ 女性1男性2の構成

○ 女性1男性1の構成

これは全てのコーラスにおいてですが、ダブルという同じコーラスを2回繰り返したものの定位をLとRに分けて聴かせます。また、トリプルと言ってセンターにも置いて質感を上げる方法もあります。

女性ボーカリストの場合

★こちらも本人で行う場合は先ほど説明した通りですが、他の方々でダビングする際の構成メンバーは以下のパターンに分かれます。

○ 女性2人の構成

○ 女性1男性1の構成

○ 女性2男性1の構成

ダブルという同じコーラスを2回繰り返したものの定位をLとRに分けて聴かせます。また、トリプルと言ってセンターにも置いて質感を上げる方法もあります。

男性女性によってどうして変わる?

これは歌い手のキー、その楽曲によってかなり構成含め変わるためです。

★歌い手が女性の場合

<例①>
サビのピークの所に上ハモを付けたい!
本人ではギリギリいっぱいのサビです。

この場合
1.まず本人に一応トライさせる。
2.本人に裏声でトライさせる。
3.諦めて高い声でる他の人に頼む。
4.メロダインの様に機械的にで無理矢理上ハモ作って済ませる。

<例②>
Aメロ後半のAに下ハモを付けたい!

この場合も
1.まず本人に一応トライさせる。
2.諦めて低い声出る人もしくは男性にお願いする。
3.メロダインの様に機械的にで無理矢理上ハモ作って済ませる。

例②の2番の男性に頼むというのはどういう事でしょう??

男性は譜面上では女性キーと同じ記譜をしますが、実際に鳴っている音はオクターブ下の響きになります。

女性の低い声は歌詞も聴き取りにくいですし、表情も暗くなりがちで表現もしにくい状況・・・、ですのでココは1つ男性で高めの声で!となる訳です。

特にプロで活躍されているコーラスの男性は、地声でC4とかまで平気で出たり、ファ、ラで全部歌えたりと、かなりの強者が多いです。

★歌い手が男性の場合

<例①>
サビのピークの所に上ハモを付けたい!
本人ではギリギリいっぱいのサビです。

この場合
1.まず本人に一応トライさせる。
2.本人に裏声でトライさせる。
3.諦めて高い声でる他の人に頼む。もしくは女性にお願いする。
4.メロダインの様に機械的にで無理矢理上ハモ作って済ませる。

<例②>
Aメロ後半のAに下ハモを付けたい!

この場合も
1.まず本人に一応トライさせる。
2.諦めて低い声出る人にお願いする。
3.メロダインの様に機械的にで無理矢理上ハモ作って済ませる。

その②WooAhコーラスとは?

★WooAhコーラスとは
メロディに対して同じ歌詞を歌ってハーモニーを付けていた”字ハモ”とは違いWooAhなど歌詞のない発音でハーモニーを埋めて行くコーラスワークです。

WooAhなど表記について
○ Woo(ウー)
○ Ah(アー)
○ Ha(ハー)
などの表記が基本として多くポピュラー音楽には用いられています。

他にTu(トゥ)など短い発音でリズムを刻んだり、
TuにLuを組み合わせて
Tu Tu LuLu TuTuTulu
と言った2小節パターンでコードを変化しながらコードバッキングの様にリズムを刻み、曲を進行させる方法もあります。

WooAhの表現方法とは?

★表現として

発音方法としては以上ではあるが、WooAhの限られた発音の中で、これに加え唄とは関係無しにcresc.やdim.やアクセント、ポルタメント、Sfzpなどホーンセクションで学んだ様な動きを出し印象付ける事もできます。


★どのような曲や曲中で用いるのが有効なのでしょうか。
○アカペラコーラスグループ
○ゴスペルコーラス
○字ハモでは歌詞が強調されすぎて強く聞こえるイメージは避けたいけど盛り上がりは欲しいとき。
サビから字ハモが出てくるが、その直前のBメロ終わりはWooAhで・・・。
サビの字ハモと字ハモの間を埋めて、コーラスの厚みを残しておきたいとき。

コーラスはメインボーカルにとても影響を与えやすいパートなので、使い方、バランス、音質にとても気配りが必要なパートです。メインとの声のなじみが悪いとかえって浮いてしまうこともあるの注意が必要ですね。

和声について

★パート数で言うならば

最小は2声そこから3声、4声とパートを増やし、厚みを出したりと調整していきます。
基本字ハモ同様DB(ダビング)してL、Rに定位として配置します。開き具合は他の楽器との調整が必要です。

★組み合わせとして

①2声の場合同性で行う事、一人が2パート歌う事もあります。
②3声の場合女性1+男性2もしくは女性2男性1
③4声は混声4部だったり、女性1男性1でダビングする事も多いです。

ここで重要なのは、人数感を出したいのか?質感を揃えたいのか?と言うことです。質感を揃えるなら、少ない人数でのダビングが有効です。その場合、息の混ざり具合、ブレスの長さ、ビブラート、ポルタメント、音の切り方など、それこそ息の合った演奏が求められますね。

第9回・カウンターメロディの作り方・考え方

カウンターメロディとは??

カウンターメロディとも呼ばれたりしますが略して”カウンター”とも呼ばれる事も多いこのメロディ。一体どういう物なのでしょうか?

日本語では副旋律、クラシックではオブリガードとも呼ばれており、メロディ(主旋律)に対して曲のイメージやそのセクションの盛り上げに一役買うフレーズの総称としてイメージして下さい。一言でカウンターと言っても実は様々なタイプが存在します。

カウンターメロディーのタイプ

カウンターメロディには大きく分けて以下のタイプに分ける事が出来ます。

・ハモリ型
・やまびこ型
・逆突き型
・維持型
・合いの手型

これらは音楽用語では無いのでイメージとしてこのタイプを覚えてください。これからタイプ別に説明をして行きますが、実際の編曲をしてDAWに打ち込む場合には色々なタイプを幾つか組み合わせて一つのカウンターメロディとして作る事が多く、またその様な組み合わせで作る事をお勧めしています。

1、ハモリ型
メロディラインと同じタイミング、リズムで動くが3度上、3度下の様にハーモニーとして動く。この場合サビなど一つのセクションで始めから終わりまでハモる事は少なく、時としてハモる瞬間があるものと覚えておいてください。

2、やまびこ型
メロディラインと同じ音程、リズムで動くが、2拍や1小節遅れてやまびこの様に出てくる。(輪唱にも似ていますね!)

3、逆突き型
クラシックでよく聞く対位法でも学習します。対位法はもちろん学んだ方がDAWアレンジする上でも大いに役立ちますますが、制約がとても多いのも事実です。ここではメロディに対し逆に動いて行くライン(メロディが上がって行けば下がり、下がって行くメロディなら逆に上がる)といったイメージです。


4、維持型
主にメロディの動きが多い場合(メロディのリズムが細かく、音の跳躍が激しい場合など)この維持型を選びます。維持型を特徴として、基本コードの動きに準じてコード進行での共通音を探し1~2小節など長い音を持続して鳴らします。メロディの動きが納まったり、休みがあるところ、メロディの節の切れ目などではカウンターメロディを少し動かす事も大切です。

5,合いの手型
リフなどと呼ばれる事も多いフレーズ。メロディの間等に合いの手の様に入れて行くカウンターメロディです。コード進行に捕われずその楽曲のセクション内で2小節または4小節パターンとして繰り返し使用して印象付けるものです。このフレーズの特徴はコードに合わせ音数、リズムなどの統一性とフレーズのちょっとした裏切りの変化がクセになり、歌の合間にも口ずさんでみたくなる。そんなカウンターメロディは聴いていても楽しくなりますよね!

カウンターメロディになり得る音色

カウンターの動きに適したカウンターの音色も大きく変わります。

1、大きな動きに適したカウンターの音色

・Strings系
やはりなんといってもこれはストリングスでしょう!
DTMでストリングスと言っても幾つか選択肢があります。
生のストリングスのイメージ・
シンセストリングスのイメージもっともポピュラーなのがSolina:ソリーナとも言われる音色もそれにあたります。

・Bell系
グロッケンやシンセベルなど沢山の音色が存在します。グロッケンなどはちょっと切ない時にサビの入り口のメロディをなぞる事も多く、そこからカウンターメロディーに変化していく事も多い音色です。

・Chorus系
これは実際に人に歌っていただく場合やシンセコーラス等でも使います。字ハモコーラスの字ハモのない場所にWooやAhなどのコーラスでカウンターメロディを入れることもあります。イメージとしてこれはゴスペルなどでよく使われる手法です。

・Synth Lead 系
昔の楽器で言うならばMoogやArp(どちらも復刻版ハードやモデリングされたソフトシンセなどがありますね!)といった楽器の音色が印象的です。
主に音の立ち上がりがそれほど鋭くなく、伸びている間に自然とビブラートが掛かる様に演奏することが多いです。(手動でのモジュレーションホイールやLFOで自然と掛かる様なタイプに分かれます。)
またポルタメントといったシンセの機能(歌をしゃくり上げる様な機能です)を使う事が多く、これにより音程の近い所でのカウンターメロディの移動をスムースに聴かせたり、音程の飛ぶカウンターメロディに対してはその動く軌道がとても心地良かったりします。エフェクトでディレイをかける事がとても多い音色でもあります。

2、細かな動きに適した音色

Strings系
こちらはシンセストリングスより生のストリングスの音色が圧倒的に多いです。奏法、音色の名前としてMarcato(マルカート)と書いているものが多いです。もちろんPizz(ピチカート)も奏法としてありますが、演奏している楽器が少なく騒がしくないシチュエーションでの使用が効果的でしょう。

Brass系
これもStringsと同じく、生のホーンセクション系とシンセブラスの2つに大きく分けられます。もちろんこの音色は大きな動きにも使われなくはないですが、カウンターメロディとしては主に細かな動きとして使われる事が多いです。
オクターブユニゾンで動いたり、リズムを和音で刻んだと、セクションでのメリハリがはっきり出るのもこの音色の特徴です。シンセブラスはこれも復刻版やソフトシンセで多数出ていますが、私はOberheimやJupitar8といった楽器で作る音がたまらなく好きです。Oberheimの”TOTO Horn”という音がどうしても出したくて学生時代に男の60回ローンを組んでOberheimを購入したのも思い出します(笑)。

3、カウンターメロディを作るコツ

カウンターメロディのタイプ、音色を紹介しましたが、それではどうしたら絶妙なカウンターメロディーを作ることができるのでしょう?その答えはズバリ一番最初に紹介した”カウンターメロディーとは?”に隠されています。

”メロディ(主旋律)を理解する”

編曲におけるカウンターメロディとは、主旋律となるメロディに対して別に新しいメロディラインと作るという作業ですよね?そのため元となるメロディの動きによってカウンターも大きく左右されます。

メロディが
・伸びている
・激しくリズムを出している。
・休んでいる
などなど
メロデイそのものの動きを理解していないと、ついメロディと同じタイミングで動き過ぎてお互いの良さを消しあってしまう事があります。

ここで役に立つのがメロディー譜やコード譜です。
では譜面からメロデイラインを読み取り、カウンターラインの構築に役立ててみましょう。
例1、譜面1
どこにカウンターメロディが入りそうか見えて来ましたか

例1、譜面2
譜面で見ると青丸の部分がメロディが溜まっていたり、休んでいたり、動きが止まっているのが読み取れます。赤丸の所は逆にメロディに動きが多く、カウンターメロディがあまり多く動かない方が良さそうな、そんなイメージです。今回は音色をStringsにチョイスして曲の進行に沿って大まかなラインを考えてみましょう!

例1、譜面3カウンター
例1、譜面4コード付き
コードの共通音や近い音を意識しつつ、メロディとの対話も感じながらカウンターメロディを作って行きます。実は私はこのカウンターメロディを作るこの段階でひたすらカウンターメロディーを歌っております。

そして出来上がった音がこちら!



いかがでしたか?カウンターメロディはどの曲に多く存在します。
是非メロディを意識する所からカウンターメロディを作って行ってください。
ここで今回のポイントをまとめておきますね!

<カウンターメロディのポイント>

1,メロディの動きを理解する。

2,カウンターメロディを入れたいセクションに対して大まかなカウンターメロディの動きのイメージをする(ここ音色を選んだり、カウンターメロディの演奏帯域のイメージもします)

3,メロディの合間などをとにかく自分で歌ってみたり、口ずさんでみて、気持ちの良いフレーズが浮かんだら即座にDAWに打ち込む

4,大まかな動きのイメージと、浮かんだフレーズの前後関係をコード進行などと照らし合わせ整理しつつ音を繋いで行く

5,浮かばないメロディのところは無理に演奏し続けず、1拍2拍置いて休んでからカウンターのフレーズを再始動する思いやりも大切です。

6,自分の好きな楽曲などでカウンターメロディを探す耳も育てる。必要だと思ったら自分の好きな楽曲でカウンターメロディを探す耳を育てる。必要だと思ったら好きな曲を片っ端からコピーし、自分の身体にその経験値を蓄積すること。

第10回・マイクセッティング

マイクセッティングについて

DTMでの編曲について今まで、4リズムの組み立て方、メロディに対する音の在り方などを紹介してきました。今回は、編曲の元となるメロディを担う歌をレコーディングする際にどのような事に注意しながら歌を録音したら良いのか、マイクの選び方、歌う時の距離、DAW側の設定等などに渡って紹介して行きます。

近年、様々なメーカーからレコーディング機材やプラグイン(DTMの中で使用可能なソフト)などが出ており、プロの現場でも自宅で出来る作業が多くなっています。その数は多過ぎてて何が良いのか分からなくなるほどです。

様々なメーカーから昔のヴィンテージ機材のシミュレート版なども多数出ており、その中には触ったらエンジニアに怒られていまいそうな機材や、私自身もスタジオでお目にかかった事が無いような珍しいものもあります。今は、そんな機材もプラグインで簡単に立ち上げる事が出来るんですね、素晴らしい事ですよね。このメーカーのプラグインは本物とよく似ている!とか、本物とはここのポイントがちょっとズレてるんだけれども、その感じが良い!とか、エンジニアの方々ともよく話題のなります。使っているオーディオインターフェイス、DTMソフトウェア、電源やケーブルなどの環境でそれぞれ意見や感覚も変わるのも事実ですから、自分の感覚に合うもの、フィーリングがマッチするもの良いな!と思えるアイテムを見つけて、それをとことん使い込んで行くのが良いと思います。

ボーカルマイクのセッティング

マイクのセッティングからまず整理してみましょう。カラオケやライブとは違い、レコーディングではマイクスタンドにマイクを取り付けて歌います。これはもう初歩の事で何を今更!と思われることかもしれませんが、スタンドで歌い慣れてないボーカルの方もいるので意外と大変な場合があります。

気持ちよく歌っていると身体も自然と揺れ、リズムを取って頭も振る・・・、ハンドマイクの場合は歌い手さんがマイクを手で持つ事で自然とマイクコントロールがされて、マイクとの距離の調整が出来ています。これがスタンドマイクになるとマイクは勝手に付いて来てくれません。マイクとの距離感が全て!とまでは言いませんが、やはり声がマイクに乗ってないと(マイクに対して声がちゃんと録音され、PCにデータ化出来てないと)せっかく編曲したものもミックスをするときにバランスが取りにくくなります。上手い歌い手さんは、スタンドマイクとの距離を取りながら身体の動きを調整しています。ドラムやベースなどの楽器もそうなんですが、腰が抜けた音だと後々の非常に処理に苦労しますので歌も出来るだけ良い状態で録音するように心がけましょう。どんなに具の美味しいうどんでも、コシの抜けたうどんでは美味しいと感じませんよね。

マイクとの距離をマイクの種類によって使い分ける!

マイクの値段は数千円の物から数百万のものまでピンキリですが、大きく2つのカテゴリに分かれていることをご存知の方も多いでしょう。ダイナミックマイクとコンデンサーマイクと大きく2つに種類があり、この2種類だけでも基本のセッティングの仕方、マイクとの距離が大きく変わります。(ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの仕組みの違いについては割愛します。)

コンデンサーマイクの場合、必ずポップガードという物を別で用意します。柔らかい素材や金属できたものなど様々です。マイクとポップガードの距離は指三本分くらいが目安です。ポップガードは、た行、は行(濁点音も)など息を強く出す音をマイクで拾うと、「ぼっ」というノイズがのってしまう「吹かれ」という現象を防ぐためのものです。
ダイナミックマイクの場合は、マイク自体にポップガードの役割を果たすものが付いている事が多いので、ポップガードを別で用意する必要はありません。(リハーサルスタジオ、ライブ会場に置いてあるものの多くがこれにあたります(SHURE SM58など)。もちろんダイナミックマイクであっても、吹かれてノイズが乗ってしまう場合は、ポップガードが必要になるので取付けましょう。



<ボーカリストとマイクとの距離>
ボーカリストとマイクとの距離は、ポップガードもしくはマイクからコブシ一個分くらいが目安になりますが、声量や欲しいニュアンスによって距離を変え調整します。

ささやくようなウィスパーボイスや、耳元で歌っているようなニュアンスが欲しいときは、マイクに口が付きそうなくらい近くで歌った方が雰囲気が出ますし、逆に激しいシャウトのときは、マイクからの距離を離さないとマイクで歪みをおこしてしまう事があります。この場合は音が遠くならない程度にマイクから離れてもらったほうが良いですね。耳元で大声出されたら耳がキーン!としてしまうし、逆に遠くでささやかれたら何を話しているのか分からないのと同じです。マイクも同じように聴き取り易い距離を保って録音出来ればよいですね。

<吸音とリフレクションフィルター>
SE Electonics社のリフレクションフィルター・ボーカルや楽器のプロフェッショナルレベルのレコーディングで威力を発揮するよう、 設計されているこの様なリフレクションフィルターは、どのような部屋でも驚くほどの アイソレーション(音の分離)効果を得られます。 フィルターでマイクを囲むことによって楽器やボーカルの直接音を壁に 到達することを制限し、マイクへの反射を極限まで低減します。
マイクと歌い手さんの距離感は何となくイメージ出来たと思います。次にマイクが録音時に拾う部屋鳴りの対策について考えてみましょう。これは自宅録音(宅録)やリハーサルスタジオなどで歌を録る場合に気をつけたい事です。マイクは歌のみでなく部屋の響きまでも拾ってしまうので、必要の無い響きをどのようにしてカット(録音マイクに入らない様に)していくのかを考えなくてはなりません。録音した音の中の部屋の響きの成分が多過ぎると、編曲が終わった後の作業、ミックスバランスを取るとき時にとても困ります。空を見上げて〜♪などととても広いイメージの歌詞で歌っているのに部屋の中のちょっと狭い様な響きの歌だったらどうでしょう?曲の世界観に合わないですよね。ささやくような楽曲にお風呂場みたいな響きがついていても同様です。

このように余計な響きをカットするのには、マイクの周りに毛布を置いたり、リフレクションフィルターを立てて、レコーディングスタジオと同じような吸音、調音を行う必要があります。

上の写真のようにボーカリストとマイクの周りを、SE ELECTRONICSリフレクションフィルターでマイクを囲ったり、同様に厚手の毛布などで囲ったりすると部屋の響きを拾わずに、抜けの良い歌を録る事が出来ます。自宅録音の場合はまずは家にある物で試してみることから始めてはいかがでしょうか。

マイクプリアンプのゲインのセッティング

マイクプリアンプのゲイン設定は、マイクプリアンプの機種によってはdB表記でないものがあったり、ボーカリストの声量やダイナミクス(音量の一番小さいところと一番大きいところの差)の大きさが様々なので、それぞれの機種やボーカリストに合わせて設定する必要があります。

目安としては、DAWのピークメーターで録音レベルを決めるのが良いです。ピークメーターで、Aメロ、Bメロなどあまり声を張り上げないところ(平均値)で-10dBくらい、サビなどで一番声量が出るところで−7から-5dBくらいに収まるように設定すれば、レコーディングした音がA/D変換で歪む(Clipする)ことはありません。(これは他の楽器でも当てはまる事ですので是非覚えておきましょう!)

また気をつけなければならないのは、マイク、マイクプリアンプ、コンプレッサー、インターフェイス(A/D変換)などにそれぞれ歪むポイントがあるので、何かおかしいと思ったら、マイクとの距離、ゲインの設定、コンプレッサーのインプット、アウトプットレベル、リダクションの量、それぞれの設定を見直す必要があります。

モニターでかけるリバーブですが、あまり長すぎるリバーブタイムのものだったり、深くかけすぎてしまうと、ピッチが不明瞭になり、歌いにくくなってしまうので、1.5sec~2secくらいで薄くかけるのが良いでしょう。もしリバーブ成分がもう少し見える様にしたいときは、リバーブタイムではなく、プリディレイを少し長めに(30msec以上)に設定してあげるとリバーブの長さをかえずに、リバーブ成分が見える様になります。

参考までにDAWにてボーカル録りの際に使用するプラグインのパラメータを紹介します。
後は歌録りをする楽曲のタイプや歌い手さんに合わせて調整してあげて下さいね。
plugin setting

第11回・ラフミックスのコツ

これから始める編曲シリーズも残す所、あと2回となりました。今回はアレンジ、唄録り、を終えて音源をミックス(まとめる)作業の概要を、参考音源を交えて実際の音色を聴き比べながら説明して行きたいと思います。

普段私たちプロのアレンジャー(編曲家)やクリエイターは、ミックス作業をエンジニアと言うプロにお任せする事が多いです。もちろんご自身でミックスをされるプロデューサーもいらっしゃいます。人に頼むのと自分でミックスをするのはどちらが良いかは、どちらとも言えない部分があります。

エンジニアに頼む
・客観的に自分の音を確認する事が出来る。
・自分では気付かない素晴らしいアイデアが盛り込まれる!

一方でエンジニアに頼んでもコチラの意図を伝えきれなくて、現場で苦労した経験もあります。

自分で行う
・思い通りの音になる。
・最後まで責任を持って音作りが出来る。

私はコンペ提出やライブ音源、アレンジ確認のミックスは自分で行います。レコーディングに関しては全てエンジニアに任せて居ます。その場合、私は自分の作業終了時のイメージでのラフミックスも、トラッキングデータと併せてエンジニアに渡すようにしてます。これは全体の方向性など細かなお願いをメールや電話で話すよりも聴いて貰ってエンジニアに判断して貰うのが1番間違いが無いからです。

昔はスタジオで1からエンジニアが付いてレコーディング作業をしてました。この場合はアレンジしている行程もエンジニアに把握をして頂いているので、エンジニアにとってもミックス作業のイメージは出来ていましたが、今はそういうレコーディング現場もかなり減って来ています。

コンペに提出する際のバランス、音圧によっても1つ間違うとコンペの合否にまで影響を及ぼす事がありますので、今回はこの重要となるラフミックスのポイントのイメージを皆さんにも持って頂けたらと思っています。

音作りのポイント

それでは実際の楽曲を聴きながら各楽器の音作りのポイントについて解説して行きましょう。あくまでも一般的な考え方ですので、ご自身のアレンジの音に全て当てはまるという事ではありません。またプラグインによっても設定が同じでも音はかなり違います。あなたの音楽はあなた自身のサウンドです。自分の耳を信じ基本を踏まえるというつもりで参考にして頂ければ幸いです。


まずは4つ打ちKickの楽曲から


Kick Plugin Setting
api 560で250Hzと1kHzをカットし、Pultec EQP-1Aでローエンド、ハイエンドを処理し、アタック感を出している。MDW EQでローのピークを削り、33609でコンプをかけローを締めている。

なんだかいきなり専門用語がバリバリ出て来てますね・・・。

ローエンド(低域端)ハイエンド(高域端)処理する:
大抵の場合EQ(イコライザーなどで)帯域を削って行く作業を挿します。

アタック感:
音の出だしのインパクト感

ローのピークを削る:
下の帯域の突出して居る帯域を削る。

コンプでローを締める:
下の帯域をコンプレッサー(圧縮)と言うエフェクトでギュッと引き締める。

現場ではこんな言葉がポンポン飛び交ってます。何となく覚えておくと便利です!


Snare Plugin Setting
ループの中に同じタイミングで似たような音色がなっているため、 api 560でローのピークを削りつつ中域を強調し、1176でアタックを潰しサンプリングっぽい質感を出している。

アタックを潰しサンプリングっぽい質感:
昔のサンプラーと呼ばれる(音を採取:サンプルする)楽器の特性です。打ち込みっぽい音にしたい時には是非!

そしてシンセベースがこちら


SynBass Plugin Setting
シンセベースでローエンドとハイの成分が多いため、api 560でカットしつつ、CultureVultureで歪みを足し存在感を出している。MDW EQ ではキックをマスキングしないようにローのピークを削りつつ、音程感が出るよう中域をブーストしている。

歪みを足し:
ギターのディストーションとは違い、オケ全体に混ざるとこの歪みは感じなくなります。歪み成分を足すイメージとしてこれを覚えておくと、存在感を出したい他のシンセの音などにもとても役立ちます!

キックをマスキングしないように:
これはどの帯域でも起こる事なのですが、10両編成の電車のある車両にだけ人が多く乗って身動き出来ない様なイメージです。その帯域の音が多過ぎると(車両に人が多過ぎると)誰が誰だか?どの音がどれだか?分からなくなっちゃいますよね?お互いの音の良さを打ち消さない!これはどの帯域でもとても重要なことなので、ミックス作業の際は特に気をつけましょう。もちろん定位(PAN)でお互いの干渉を避ける事も、前後の処理でもある程度は可能です。

ギターやピアノの上物はこういうイメージです。


EG Backing Plugin Setting
全体のバランスで4つ打ち楽曲の中域は、シンセのフレーズを見せたいので、SSL E Channel EQで処理しつつハイをブーストしている。コンプは1〜2dbリダクションする程度にLA-3Aをかけている。


EG Wah Plugin Setting
こちらもSSL E Channel EQで中低域をカットしつつ、ローエンド、ハイエンド、中域をポイントでブーストし、音数が多いオケの中でも埋もれないサウンドにしている。


Piano Plugin Setting
SSL E Channel EQで低域、中低域の余分な帯域を処理しつつ、10kHzからシェルビングでブーストしている。明るいピアノサウンドにする為にMANLEY Variable Mu Limiterでコンプをかける。

ハイをブースト:
上の帯域を持ち上げる(増幅させる)こと。

2dbリダクション:
音量の大小の誤差を割り引くイメージです。大きい所を2db分常に割り引く。

全体として、生っぽくしたいオケとくらべて打ち込みの楽曲は、各楽器の帯域の棲み分けをしっかりして分離がよくなるように気を付けると、パキッ!とした音に仕上がります。

次にアコースティックなバンド系ミックスに於けるパートのミックスポイントになります。


Kick Plugin Setting
api 560、Pultec EQP-1Aでローからローエンドにかけてブーストしつつ、ローミッドを少し削って重くなりすぎないようにしている。コンプはFairchild 660で1〜2dbリダクションするようにし、ロー感は損なわずにタイトにまとまるようにしている。最終段に入れているapi 550は全体に混ぜたときにKickの中域が目立ってしまったため、全体とのバランスを取るために、1.5kHzを2dbカットしている。


Snare Plugin Setting
api 560とPultec EQP-1Aでローエンドを持ち上げて、スネアが前に出てくるようにPultec EQP-1Aで12kHzから上をブーストして、抜けの良いサウンドにしている。1176はアタックを遅めにセッティングして歯切れの良いスネアになるようコンプをかけている。Api 550で3kHzを削り、スネアがオケの中で主張しすぎないようにしている。

キック、スネアともに、打ち込みのモノは生ドラムと比べて低域の倍音が少ないため、ローをEQ で持ち上げつつ、中低域の処理をして重くならないようにしている。

ここでポイントなのは、曲の全体のイメージに合わせてどういう音にしたいかの明確な目標が見えている状況で積極的にPluginを挿しているというです。もう皆さんお気づきだと思いますが、1つ1つのPluginには癖があって得意不得意な部分があります。Qの設定にしても必要な帯域を足して行くものと削って行くものに大きく分かれます。

足し算なのか?引き算なのか?

コンプレッサーにしても同じような考え方が出来るので、自身の経験だけでなく、リファレンス音源を構築して行くこともミックスにおける重要な作業のポイントです。作業途中でリファレンス音源と聴き比べたり、スピーカーでの大きめの音、スモールモニターを切り替えてチェックする事も大切です。ヘッドホンだけでミックスをする事はどのエンジニアも言っていますがお勧め出来ません。


Bass Plugin Setting
こちらはシンセベースと違い、生ベースのイメージです。SSL E channelのEQでピークとハイエンド、ローエンドをカットし、Culture Vultureで歪みを加えて存在感が出るようにしています。LA-3Aはハードにコンプレッションをしても音が破綻しないので、5dbくらいリダクションするようにかけてベースの音圧が安定するようにしています。MDW EQでは、キックとかぶる低域と、他のオケとかぶる1kHz付近をカットしています。MDW EQはカットで使う際に非常に効きがよく自然にかかるので便利です。
SSL G Series Bus Compressor PlugIn
ここでのポイントは、ベースとしての存在感とその近い帯域に居るキックとの音の混ざり具合をどうするか、となります。この2つで楽曲のグルーブ感(ノリ)や曲のコード感が決まり、また唄録り前においては歌い手さんのピッチやリズム感にも大きく影響が出ます。唄が美味く聴こえるか、リズムが目指したノリが出ているか、が勝負どころになります。

Drums全体にコンプレッサーを使用します。これは元々SSLと言うスタジオで使用されていた数千万円のミキサー卓(SSL 4000Gコンソール)の心臓部にあった音全体のトータルにかけるマスターコンプとして使われていた機材のシミュレーションになります。特徴としてマスターコンプレッサー特有のドライブ感に溢れ、パンチの効いたサウンドがDAW上に再現されます。




4リズムの音は以下の様に整理して行きます。


Backing EG Plugin Setting
api 560で、キックとかぶる帯域を避けつつ、ローエンドをブーストし、オケの迫力が出るようにしている。


Crunch EG Plugin Setting
SSL E channelで低域と中低域を処理し、オケの中に埋もれすぎないようにしている。


Apf Plugin Setting
SSL E channelで低域と中低域、ピークのある3〜4kHzをカットしつつ2kHzからシェルビングでブーストして明るいサウンドにしている。Neve 33609 はピアノを自然にコンプレッションするのに良い。


Epf Plugin Setting
SSL E channelでベース、ギターとかぶってしまう低域、中低域をカットしつつ、ピークをカットし、音量を上げられるようにしている。

さぁそれでは上物のHornSectionについてはどうでしょう?

歪み成分を足すのにはCultureVulture Pluginなどがとても便利で、私はデモアレンジの段階でもDrumSetのアンビエント成分にもこのCultureVultureで歪みを足してドラムの奥行きを感じさせる事で立体感を出しています。木管の場合は特にリバーブで奥行きをつける事でオケの中に自然に収めることができます。実際に単音とオケに混ざった音の違いをを聞き比べてみましょう!





Horn Section Plugin Setting
打ち込みの場合は特にホーンセクションに歪み成分を足すと、生っぽい質感を出せたり、Saxなどのソロパートではオケの中から一歩前に出す事が出来る場合がある。ライブなどでもソロ楽器の人が前に出て来て吹いている様なイメージ。

おおまかなイメージ音とプラグインセッテイングのご紹介になりましたが、この様に楽曲に対して、それぞれの楽器のアプローチをどのように組み立て1つの音楽のバランスの中に納めるかを垣間見ることができたでしょうか。

唄ものの場合は、ミキシングだけではなくアレンジにも気を使って唄を歌うことが困難なアレンジや、詞が聞き取れなくなる様な演奏を避けるべきだと思います。ミックスをする時に唄に対して邪魔な要素、素材は結果的に殆ど聞こえないような音量に下げられたり、無駄な帯域として大胆にカットされたり、そして一番残念なこととして、音そのものがカットされてしまう事もあります。

例外として、アレンジとして混沌とした雰囲気を出したいセクションも当然ありますし、そこから抜け出したサビの爽快さや開放感を演出することも多々あります。聞こえないけど感じる音圧を隠し味として入れる事もあります。大切なことは何度も書いておりますが、どういう目的でその音色やフレーズをそこに入れたいと思うのか、どんなイメージでそのセクションや楽器を必要と感じているのか、を明確に持つことです。

私も含めクリエイターは沢山の音楽を聴き沢山の方々との関わり合いから学んで来た経験で色々なアイデアや試してみたい事を思いついたり、またその判断する事が多いです。是非、皆さんも沢山の音楽を聴いていろいろな方々とコラボしたり、ライブに行ってその気になる人の演奏を聴いたりと、沢山のチャレンジして行って下さい!

最終回・緊張と緩和とトーンコントロール

アレンジの最大のコツはメロディーの緊張と緩和を読み取る事

10回、11回は、アレンジの行程を飛び越えてボーカル録音、ラフミックスのヒントをご紹介しました。「これから始める編曲」ではメロディからのコード、リズム付け、そして様々な楽器の組み合わせをご紹介してきました。最終回となる今回はその集大成としてアレンジをする作業の流れの中で、一番大切なこと、私がいつも気をつけている事をお話したいと思います。

それは、メロディーの緊張と緩和を読み取ること。これを身につけると、コード付けやリズムアレンジ、カウンターラインにまで活かすことが出来ます。では緊張と緩和とはどういう事でしょう?

メリハリ、飴と鞭などの例えにもありますが、緊張と緩和は私達の生活の中でもとても頻繁に起こっていることです。例えば野球やサッカーの世界レベルでの手に汗握るような戦いの観戦。映画やドラマでのハラハラドキドキする展開。落語やお笑いの世界でも大切と言われている緊張と緩和などなど。

一番分かり易いのが年末恒例のダウンタウンの「笑ってはいけないシリーズ」の話です。それは決して笑ってはいけない緊張感。その緊張をこらえ切らずに笑ってしまい解放される。予期せぬ笑いの刺客が次々とその緊張を解こうと笑わせる。観ている自分もついつい笑いを堪えてしまったりします。

この様に緊張と緩和を繰り返すことによって人は、喜びを感じたり、恐怖を感じたり悲しみを感じることが出来ます。映画などはこの緊張と緩和の構成力で、見ていてあっという間の3時間だったりもします。緊張と緩和が上手く行っていないと凄くダラダラと長引いて感じる事も多いですよね?音楽も同じです。メロディーの緊張と緩和を読み取り、そこにコードの緊張と緩和を盛り込む。そして全体の構成の中に緊張と緩和のバランスをとりながら全体のイメージを作る。これがアレンジする上での大切な流れになります。

メロディーから緊張と緩和を読み取る

ここにはコード付けのヒント、リズムアレンジのヒントも隠されていたりします。それではメロディーのおける緊張と緩和とはどういうことでしょうか。これらには大きく分けて2つあります。

1,音程による緩急
2,リズムによる緩急

この2つによって緊張やそこから開放される緩和を感じる事が出来ます。

音程の飛び方の緊張としては古くはクリスタルキングの「大都会」のサビ、MISIAの「Everything」のサビ入り口のメロディからも読み取れます。隣り合う音が離れている音の跳躍は、緊張感を生みます。5度~オクターブぐらいの跳躍からそれを感じる事が出来ます。低い音から高い音へ飛ぶ事が多く、音の高い所はノドも緊張してハリが出ています。下の低い音から飛ぶ事によって、高い音をいきなり歌うよりも跳躍をつけることで、その緊張感を演出していると言えます。音程が緩和される時にはその曲のキー(調性)の基準音やコードトーンに戻る時により緩和され、安心感、安定感を生みます。EXILEの楽曲もコードのテンションからメロディーが始まりコードトーンに落ち着く手法の楽曲がいくつかあります。

リズムにおいては、リズムが段々細かくなる様なもの。ドリカムの「何度でも」もそうですが、繰り返しの3拍フレーズ。シンコペーションの連続も緊張感が生まれます。EDMなどはサビに行く前にスネアが4分から始まり、16分まで細かく連打しサビ頭でリズムを開放するアレンジが多いですよね!メロディもドンドン盛り上がると細かくなり、その後に緊張が解放される伸び音が来ます。

それではメロディーと音程とリズムの環境を譜面から読み取ってみましょう!
例:林田曲


このメロディーの緊張と緩和を読み取ることが出来ましたか?
こちらがその説明になります。
メロディーの緊張と緩和を読み取ったら、さあ次はこの緊張と緩和にコードを付けて行きます。コード感からも緊張と緩和を作り出して行く作業になります。
Ray Yamada

この楽曲は元々3コードのみの楽曲でしたが、このサビの入り口のメロディーの緊張感と開放感をよいはっきりさせる為にコード思いっきり変えてみました。

如何でしょう?随分とイメージがガラっと変わります。コード付けひとつでも随分印象が変わるということ事が分かります。メロディーの読み取りとコードでここまで雰囲気が変わるのはアレンジしていてとてもワクワクするものです。

ここから映画の様にドッキリとする展開を構成して行くと良いと思います。これは歌詞にも関わる事ですが、サビ始まりの曲とかも多いのは何故だと思いますか?映画でもよく使われる手法ですが、結果を先に見せてから物語が始まる。これってインパクトガリ、えっ!!どうして??最初に問題提起する事で見る人、聴く人の心を惹きつける事が出来るからなんです。

トーンコントロールする!

音楽の3大要素の他にアレンジを進める上で大切な事があります。音楽はメロディー、ハーモニー、リズムの3要素から成ると言いましたが、トーンコントロールをすると言う意識が重要です。ジャンルや曲調によって使う楽器や選ぶ音色が変わります。またクライアントからのリクエストによってもサウンドの方向性が変わって来ます。トーンコントロールを間違うとどんな良いアレンジだとしても最終的にはNGがでてしまう事もあるんです。メロディーを打ち込んでアレンジを始める際に楽曲のサウンドの仕上がりイメージをどれくらいしっかり持っているか?出口をしっかりと見極めて作業を始めなくてはなりません。そしてクライアントからより多くの情報を得ることもとても大切です。

楽曲の使用用途
季節感
イメージ(映像、ダンス)
クライアントやアーティストの音楽の趣向
音の方向性(ジャンル、編成、生楽器主体なのか、打ち込みなのか?)

それでは実際のトーンコントロールするとどういう行程でしょうか?

KICKやリズムの音色選び。ベースやコード感をどの楽器に持たせるのか?

サウンドの時代や楽器編成や人数感も想像しながら音色を選んで行くことが大切です。

その上にダビングする楽器はどういう音色でどんな動きのイメージか?

ジャンルや全体のサウンドのイメージをしっかりと持つ為に、リファレンスする事もとても大切です。目標とするサウンドが有るならばそれを徹底的に聴く事。そして大切なのはリファレンスした物のただのコピーにならず、インスパイアされた要素をどれだけ盛り込んで行けるか?要求された音以上の驚きや喜びをクライアントやアーティスト、ユーザーに提供することが出来ているか?ここの意識の高さがアレンジの良し悪し、延いて楽曲のクオリティに強く反映されます。トーンコントロールの意識がしっかりしていれば軸がブレる事なくアレンジ作業を進めることが出来ますよね。

最後に

時代の流れによって音楽制作の過程が変わって来ていると最近とても感じます。20年前の曲作りと今の曲作りの大きな違いはどこの部分だと思いますか?一番の違いは昔は大きな空間に沢山の人が集まって曲を作り上げていました。会社で言えば大きな会議室で皆で一つの楽曲を作り上げるイメージです。それに比べて今は1人で残業して仕上げた物を上司に次の日に確認してもらう様なそんな感覚としてDTMの編曲は受け取れます。どっちが良いかとは言い切れませんが、私にはリアルタイムで色々な人の意見や演奏プレイを聴ける事が今では貴重な時間だったと思います。

同じ機材を使っているから全て同じ音になるとは言い切れない。同じ味噌でも同じ味噌汁が作れるとは言えない。それぞれの家庭、作る人によって味が変わる物ですよね?自分の持っている機材で相手の要望、自分のイメージをそのまま表現するには、その機材をより理解し、どう使いこなすかで大きく結果が左右されると思います。沢山の音楽を聞いて、好きな所、良いと思う所は徹底的に真似すること。その蓄積された経験からオリジナリティは出てくるのです。

水島 康貴

Ribbon、Wink、光GENJI、などアイドルグループからZoo、稲垣順一、ゴスペラーズ、SPEED、アニメや映画など様々な楽曲の作曲・アレンジ・プロデュースを担当。またSPEEDに関してはデビューから解散まで全楽曲のアレンジを担当。2000年以降はプロデュースや年末の格闘技のDYNAMITEなどのオープニング曲や美空ひばり追悼コンサートアレンジなど活動の幅を広げている。

現在、音楽レーベル"mizushi"を主宰しアレンジジャーの枠を越え幅広く作曲・プロデュースを手掛けている。

http://www.mizushi.org/