多忙を極める人気エンジニア:マイク・シップリー
マルーン5やアリソン・クラウス等のコントロールボードのむこうで By Marsha Vdovin

グラミー賞受賞者マイク・シップリーは音楽業界の中でもトップミキサーの一人です。
彼のヒットメーカーとしてのキャリアは30年以上にもなります。彼はめったにインタビューを受けないので、今回UAハードウェアやUADパワープラグインをどのように使っているかを語ってくれることに私は興奮を覚えました。
オーストラリアに生まれのシップリーは10代の時イギリスに移り住み、そしてレコーディングに興味をもつようになりました。キャリアはウェセックス・スタジオのアシスタントとして始まり、最初のセッションは“セックス・ピストルズ”でした。シップリーはプロデューサーであるマット・ラングと親交を持つようになり、共同制作は20年にわたりました。デフレパード、コアーズ、シャナイア・トゥウェインといったアーティストの数々の素晴らしいレコードのプロデュースを手掛けました。そして今回はマルーン5です。今回アリソン・クラウスの新しいアルバムのミキシング中の合間の短いブレイク中に話を聞くことができました。
いつからデジタルレコーディングやワークステーションで仕事するようになったのですか?あなたにとってその転換はどんなものでしたか?
僕達は「Fairlight」が世に出始めた頃からデジタルでの仕事を始めた。一体何年前からなんて覚えていないよ。でもマットと僕があるプロジェクトで一緒に仕事をしていた時、僕らは「Fairlight」を使って独創的な何か違うサウンドをやろうと思いついたんだよ。初めの頃は、音がとってもフラフラと安定しなくて沢山問題があった。でも僕らは必ずしもアナログではできないことをしたかったんだ。だから僕らはその当時としてはハイブリッドな物(Fairlightのこと)を使ったんだ。「Fairlight」が最初に出始めたのは80年代初期だったよ。
僕達はそれ以来ずっとハイブリッドを使っているよ。「Fairlight」のすべてのヴァージョンも使ったし、
「Pro Tools」のすべてのヴァージョンも使った。初めてシャナイア・トゥエインのアルバムに取り組んだ時、僕達はすぐに「Pro Tools」を使うことにした。それが僕達が完全にデジタル化になった時で、編集や音質を変えたり、違ったパースペクティブを持つという観点からアナログではできなかった沢山のことを操作できるようになったんだ。
僕達は、「Pro Tools」の初期ヴァージョンすべてを、マルーン5のレコードディング中のつい最近まで試していた。僕らはまだ古き良き“Pro Toolsランド”にいるんだよ。リコールするのがずっと簡単なんだ。このレコードの、たったいま収録したばかりの最後の曲は、実は160トラックもある。アナログではそんなにできないよ(笑)
Pro Toolsで行い、素晴らしい結果だった。でも、このレコードをミキシングするのは「ハイブリッド」みたいな物なんだ。僕はアナログの96―インプットSSLコンソールでミキシングしている。でも、それを使ってもたくさんのものがスモールフェーダーにでてきて、だからすべてPro ToolsからEQする必要があるんだ。160トラックを処理するなんてとんでもないし、(笑)そんなに大きいボードはないよ。だから僕達はミキシングの過程でもプロ・ツールズをたくさん使っている。
でもあなたは「Pro Tools」をテープレコーダーだけとして使っていませんよね。
Pro Toolsは確かにテープレコーダーだ。でも僕らは従来のアナログボードもPro Toolsプラグインとも一緒に使っているんだ。両方使っている。「ハイブリッド」みたいなもんだよ。

あなたがSSLボードを好きだって聞いたけど。
そう!僕はSSLボードを気に入っているよ。本当に大ファンだ。コリン・サンダースが最初に Eボードを持ってきて以来ずっとSSLを僕らは支持している。 僕らは彼が(コリン・サンダース)初めてに「E コンソール」をつくった時に、最初に手にした一人なんだ。僕らは従来と違う新しいコンソールを探し求めていたんだよ。
マットはレコード制作の為に離れてる間、スタジオを彼の為に新しく組み立て、配置するよう僕に頼んできたんだ。
もともとはマネージメントのほうからMCIのようなものを入れるよう言われていたけど、でもイギリスのオーディオマガジンに掲載されていたこの広告を見てしまったんだ。そこにコリンが「E SSLコンソール」の短い広告を出していた。彼は食料雑貨店の袋の底からE コンソールのモジュールをはみ出させながら、ロンドンにある僕らのスタジオに現れたんだ。まるで「どう思う?」とでもいうように・・Eコンソールはその当時のほとんどのコンソールよりももっとはるかに色々なことができた。だから僕はただ、「これ欲しい」と言ったんだ(笑)。
だから僕らはそれを注文した。僕達はEコンソールの初期の物を持っていたんだ。それから僕らはそれを使って様々な問題を解決した。僕らはいつもにコンソールでテスティングやデバッギング作業をしてた。僕らは初期のJを持っていて、それでしばらくの間デバッギング作業をしてたよ。僕らはずっとSSLといい関係を保っていて、彼らが世に出したすべてのコンソールの初めのものをもっているし、実のところ、僕らはいつも「実験台」みたいなものなんだよ。
でもそれと同時に、僕はボックスのなかでミックスします。僕はDigidesignのアイコン・ボードを持っている。僕がある方向に行きたいと思ったら、アイコンの所に行ってボックスで100%ミキシングする。―例え僕らが、僕達の為に特別につくられた48チャンネルのチューブサミング・ミキサーを持っていてもです。
なぜあなたは時々SSLやサミングボードの代わりにアイコンでミキシングするのですか?
色々な理由からだよ。時には予算的理由で、また時には僕がグレンウッド・プレイスのような場所に来るのに必要なだけのお金を持ってないような若いバンドと一緒に仕事をしたいからだ。僕はロスアンジェルスにあるグレンウッド・プレイスを拠点としているけど、そこは目を見張るような凄いスタジオなんだ。そこは3つのスタジオの総合施設で、僕はそこのサウンドトラッキングルームが大好きだ。そこにあるJシリーズはとても良くメンテナンスされていて、僕はそこのスタッフを良く知っているけど、本当にきれいな庭があったりするんだよ。
でも僕にとってこのスタジオは僕の家の一部みたいなものだよ。特別に建築しアイコンも設備されていて、だからバンドが予算を組む余裕がない時、僕は喜んでアイコンを使うんだよ。シグナル経路はとてもアナログで、すべてのシグナルは48チャンネルのサミング・ミキサーなどを介しチューブを通じてPro Toolsに帰ってくる―その音は僕にとってずっと暖かなものとなっているよ。
マットと僕は、特にマルーン5のアルバムの為に、192よりもっといい音を選び出すコンバーターをしばらく探していた。マットは数年 “ブラック・ライオン・スタジオ”という会社と仕事をしていて、僕らはそこからすべて新しい192シリーズを購入した。新しいコンバーターはまったく目隠しテストみたいなものだった。まったく最新鋭のコンバーターだったよ。だから、 ボックスで作業することに大きな違いがでた。なぜなら、それらのコンバーターは本当に素晴らしく、まさに優秀なんだよ。
僕は今取り掛かっているこのアリソン・クラウスのアルバムをトラックするのにも使っている。大きなアナログ式経路を使って、アイコンや純粋にデジタル式にも作業しても良いように、僕達はすべてセットアップし準備しておいた。 そして僕はただ、僕自身が好きで信頼を置くプラグインを使うだけなんだよ。そして、いつも通りに素晴らしい出来栄えになるのさ。
僕が単にちょっと古臭く人間で、大きなボードの向う側に座ることは僕にとって最高のことなんだよ。僕はマウスばかり使ったミキシングをするのは好きじゃない。僕はフェイダーがあるゆえにアイコンが大好きなんです。僕はマウスを使っての作業よりも、フェーダーのひとかたまりを取り込んで、すぐに内部でいろいろ変えてみるのが好きなんだ。
みんなアイコンを「ビック・マウス―大きなマウス」と呼びたがるけど、僕にとってはそれ以上のものなんだ。最高だよ、僕は大好きだ。 僕達は両方の方法で使っている。両方のシステム、両方のアナログ・ミキシングを使用している。最近では、どっちみちトラックカウントの為にいつもハイブリッドなんだ。そして時々、サミングボックスを使用してのように、すべてボックスでやるんだ。
あなたはLA-2Aや1176のようなUniversal Audioのハードウェアをよく使いますか?
ええ、もちろん。
古いヴィンテージユニットと私達の新しく再発売したものを比べてみたことがありますか?
ええ、あるよ。古いのは全部ちょっと違う。一方、新しいほうはどちらかというと同じように感じられる。古いものは、時にはちょっと運任せのようだ。 僕にはお気に入りがあって―グレンウッドには、例えば僕が好きな古い1176のようなものがある。でも、僕はユニバーサル社の新しいタイプのものやLA-2Aがいまだに好きだよ。だってこれらの機種はキレイだし、単に音が良いんだよ。これらを使ってのサウンドは僕にとってずっと開放的に聞こえる。古いタイプのものには、素晴らしいけど、扱いにちょっと細心の注意が必要だし、それに・・・・
よくメンテナンスをしなくてはならない。
そう、とっても!スタジオにはそんなのが沢山あるんだよ。
あなたはマルーン5の新しいプロジェクトにも関わっていますね。スイスにあるマットのスタジオでレコーディングされたのですか?
その通りだよ。
お洒落な演奏(クールな演奏)のように聞こえますよ。どのくらいトラッキングをしたのですか?スタジオにはどのくらいいたのですか?
そこにトラッキングをする為にはいなかった。彼らは、僕が思うに、曲を書いたり、マットと一緒に曲を編集したりして9ヶ月もの間トラッキング作業をしていたんだ。その後、バンドがここに戻ってきてから僕達はいくつかのボーカル部分やパーカッションの重ね録り等の部分をカットした。僕達は4-5週間くらいここにいて、ちょうどいま2度目のミキシング中だよ。
ずっとレコードに付け加える作業をしている。ボーカル部分を録り直したり、キーボードを付け加えたりなど。プログラミング作業だよ。
これからミキシング作業に入るけど、僕達は一つひとつのミキシングに長い時間を費やし、そして素晴らしいアルバムになるんだ!僕達は素晴らしいものにする為、できる限り一生懸命働くだけなんだ。当然、それは一日一曲みたいなものではない。たくさんの人々が一日一曲終わらせなきゃというプレッシャーで、働いているようなアルバムではないのさ。とにかく出来上がらせる為に、ファクトリーミックスをするのが人達もいる。でも僕達は時間をかけて、少なくとも一曲2-3日間くらいかけ、そしてその時間が、僕達に歌やドラムサウンドやフィーリングなどを変化させる試みをさせてくれるんだ。
僕はロスアンジェルスでミキシングしているし、マットはスイスで作業をしている。だから僕は彼にミキシングしたものを送ったり、コメントしたり交換している。そしてバンドがここにいるから、国際的にミキシングしている感じだよ。でも楽しいよ。本当に楽しい。

そうだね。プラグインは凄いよ。例えば、このアルバムの為にマットは160トラックもの情報を詰め込んだ。だから96メインインプット以上のものすべては、サンプルもマルツも含めて小さなフェーダーに乗せたんだ。すべてのボード上の小さなフェーダーも含め、結構な量を占めた。それは莫大なセッションだったんだ。だから小さなフェーダー上のものすべては、EQなどすべてUADプラグで処理した。
1081、Neve EQ が大好きだよ。本当に素晴らしい。実際、隣のボーカルの編集をする部屋には素敵な、素敵なNeveがあるんだよ。そして僕はNeveの存在、Neveのサウンドが本当に好きなんだ。NeveのUADエミュレーションは並外れて素晴らしいよ。同じ最上級の音が得ることができる。とってもクリーンでスウィートなんだ。僕は1081を使うのが大好きだ。Helios EQ を使うのも、その多様さゆえ、とっても好きさ。特に1176とLA-2Aのプラグインが好きだ。それとFairchildも好きだよ。僕達はいろんな場面でプラグインを使ってる。ある領域では違うパーツに違った音を与えるのに、たくさんプログラムされたEQをボーカル部分に使ったりする。すべてCambrigde EQでおこなうのさ。それはEQにとっても、良いQをダイヤルして、良いQ上にあるべき周波数を引き出すためにも良い事なんだ。 それが微妙なものでも。僕はそれを使うのが大好きだ。
その効果も大好きだよ。僕は本当に長い間、本物のDimension Dを探していた。なぜかというと、イギリスでは、僕達はほとんど全てのものをDimension Dを通してミックスしてたんだ。まったく凄い箱だよ。でも今、僕はUADを手に入れいつも使ってる。Dimension Dは僕にとって驚くべき箱なんだ。
それぞれのインストルメントは特定のユニットをモデルにして作っています。例えば、HeliosはBasin Streetにあるボードをモデルにしているんですよ。
Basin Street, ほらね!あそこは素晴らしいよ。僕はよくBasin Streetのスタジオを予約したものだ。
Jerry Harrisonから借りたDimension Dはトーキング・ヘッズ・ユニットでした。
そうだね。あれは最高だよ。前にも言ったように、僕達は何度も使っている。素晴らしいモデルだ。Fairchild はどこのをモデルにしているの?
Ocean Wayのユニットです。
ほらね!それはいいね。あ!それとFATSOだ。僕はFATSOのハードウェアを4つ持っているけど、本当はUADのFATSOを使うほうが好きなんだ。
実際に、プラグは数個エキストラ機能が備わってます。
そうだね。とても気にいっているよ。前に言ったように、僕のすぐ隣に4つ置いてあるよ、僕のアウトボード・ギア・ラックの一部分としてね。でも、実際には、今はプラグインに直行してしまうんだ。なぜなら僕はそのエクストラの機能が気に入っているし、僕には同等に良い音に聴こえるんだ。それに僕はすべてのセッティングを保存しておき、より簡単に呼びだせるようにしてある。
僕らはこれらのミキシングのために、とても複雑に入り組んだドラムセットアップがあって、なんでも試すことができるようになっている。だから僕はボックスにあるすべての機能を使えるようにしたいんだ。ずっと簡単だし、素晴らしく聴こえる。。
あなたはTrident soundのファンですか?
ああ、大ファンだよ。
Trident A-Rangeプラグインを試してみましたか?
試してみたよ。これも素晴らしかった。“そのサウンド”を創りだすのに本当に役にたつよ。
君達の(SPL)Transient Designerは、僕が聞いた中で一番ハードウェアのTransient Designerに近いよ。僕はそのいくつかを持ってるし、使うのが大好きだ。
Space Echoは試してみましたか?
うん。実際、今僕らが取り組んでいるマルーン 5の最初の曲のイントロにもSpace Echoを使っているよ。この数日間、その曲を終わらせるのに取り組んでいて、そこらじゅうにSpace Echoを使ったのさ。(笑)
なんていう曲ですか?
“Misery”という曲だよ。僕らはその曲のイントロとブレークダウンでもSpace Echoを使った。僕は本当にSpace Echoが大好きだよ。
おもしろそうですね。
ああ、本当に楽しいよ。
UAの商品はまさにずば抜けているよ。僕らの定番であり、ハードでありソフトなんだ。本当に真面目に取り組んでいる。僕は君達のエミュレーション好きで、すべて素晴らしいと思っている。僕は全部大好きなんだ。
