インタビュー
UADパワープラグイン使って多くの作品を残す、映画作曲家ハンス・ジマー氏インタビュー 



ハンス・ジマー氏はハリウッドにおいて、最も多作にして人の心を掴んではなさない作曲家の一人です。100作以上の映画と8つのアカデミー賞に名を連ね、ジマー氏のスコアリストには「パイレーツオブカリビアン」シリーズ、「グラディエーター」、「ライオンキング」、 「ダビンチ・コード」、「シャーロック・ホームズ」、「ラストサムライ」、「カンフーパンダ」や「ダークナイト」等があります。ジマー氏の音響デザインでの専門知識や、従来のオーケストラ楽器とエレクトロニック楽器の共同作業におけるパイオニア的な偉業は、クリス・ノーランやガイ・リッチー、そしてロン・ハワードといったダイナミックな映画監督達をも魅了している。彼はとても上手にUniversal Audio社のUAD-2 パワープラグインを彼の仕事に活かしています。サンタモニカのビーチ沿いにあるジマー氏所有の最先端スタジオ、“Remote Control”で彼のすべての作曲が行われています。 このたび、彼は我々Universal Audio社を招いてくれ、彼が持つ複数のUADシステムが、作曲する際、どのように活躍しているのかを見せてくれました。

まず、あなたの経歴からお話していきましょう。 

私はロンドンでシンセサイザープログラマー、またレコーディングエンジニアーとしてキャリアをスタートしました。私はとても下手なレコーディングエンジニアーでしたけど、私が働いていたスタジオのたくさんの人々から色々学びました。その当時、ミュージシャン「になるべきかエンジニアか作曲家になるべきかを決めていなくて、私はただ音楽のすべてが大好きでした。その当時、私は「もし現代において音楽家になりたければ、技術的な側面を学んだほうがいい」という考え方だったのです。

映画作曲家スタンレー・マイヤーズのアシスタントとして働き始めた頃、彼は私に映画音楽の作り方を教えてくれました。 スタンレーは突然ステファン・フレアーズやニック・ローグといった監督と仕事をさせるという難しい仕事をさせたんですよ。アメリカでの最初の映画は「レイン・マン」でした。ハリウッド的にはそんなに悪いスタートじゃないよね。

でも、私は映画の仕事を始める前は、長い間トレバー・ホーンと仕事をしていたのです。現在はもうありませんが、“Nova”というスタジオで働いていたものです。そこには輝かしいNeveコンソールがあって、私たちはそれを使ってたくさんのことをやりましたよ。“Trident スタジオ”でも働いていたけど、そこではいつもTrident Aを使っていました。そして次第にそれにも飽きて、Harrison3232も使うようになりました。だから私は近頃、Universal Audio社は私が次に何を欲しいのか、私の心を読んでいるような気がしてならないんですよ!Universal Audio社は、私が昔教わったすべてのミキシング・デスクをモデルにしている。そして、実際とても役に立っていますよ。おかしなことに、私は一緒に育ったあの「昔なじみの獣たち(古いミキシング・デスクの意)」が懐かしくてならないのです。

私はずっとエレクトロニックミュージックが好きでした。私には電子楽器やスタジオ全体さえも、ギターやバイオリンのような正真正銘本物の楽器のように思えたのです。人々がピアノで音階を練習するように、私はシンセサイザーの音の出し方、ミキシング・コンソールの仕方や、その他スタジオじゅうに転がっているものすべてを練習しました。
 

「正直言って―私はこの手のインタビューをほとんど受けないが―Universal Audio社の人々がしている事というのは、現在、他の誰にもできない凄いことなのです。本当に信じられないくらい役立っている。本当に類まれなものです。」

あなたは、デジタル技術とサンプリング技術の早期導入者でしたね、例えば、“Fairlight”とか。 

私の親友、ステファン・ペインはその当時、“Fairlight” の代理店でした。彼とピーター・ガブリエルは“Syco System” という会社を共同経営していて、私に“Fairlight CMI” を自由に使わせてくれたのです。最終的に、スタンレーと私は自分達でも一つ購入しました。でもそれ以前、実はそのかなり前から、私はコンピューターを使って音楽を作っていました。私はRoland社の“MicroComposer” を持っていて、それは本当に素晴らしいかったですよ。でも思い返してみると、それはひどい装置で、すべての音符を数字に直して入力しなくてはなりませんでした。もちろん、延々と時間がかかりましたよ。これら初期のシーケンサーを使って仕事をした事は、つまり楽譜を数数字に置き換え、それをシンセサイザーで音を出したり、、、、、、ある意味、私にとって音楽教育だったのです。

最近も“Cubase/Nuendo”を使ってますか? 

ええ。現在、私はクリス・ノーランの新しい映画「インセプション」にたずさわっていて、数年前なら「全く!こんなにテクノロジーを進歩させて  凄いと思わないかい?」と言ったことでしょうね。でも、私がいま本当に凄いと思っているのは、我々がどのようにして、信じられないような事を この映画でやっているかということです。おまけにテクノロジーは疲れないし、汗もかかないのです。とっても順調に問題なく進んでいます。最近では コンピューターやソフトウェアに絶大な力があるんですよ。

まさしくエレクトロニック・スコアです。オーケストラ演奏がある。でも、電子機器も平等にスポットライトを浴びていて、おまけにジョニー・マーのギター演奏もある。ミキシング段階ではジョニーとオーケストラを除いて、すべてバーチャルなのです。ダブステージでもすべてプラグインを使ってできますよ。

あなたはコンソールやミキシングコントローラーを使っていますか?

すべて“Euphonix System 5”を使ってやっています。でも同時に、Cubase”のすべては、君たちのUADプラグインを通しておこなっています。最近、私は何を使うかとてもうるさいんですよ。世の中には本当にたくさんのプラグインが出回っていいます。特にソフトシンセ、それらをいじくり回しているだけでは、音楽を何も作ることはできません。だから今では、本当に良いサウンドと思うものだけに限定しているのです。

私は今でも、古い本物のアナログものをそばに置いていますよ。でも、フィジカルモジュールに適切なパッチ操作をすることは、バーチャルなものでするよりも時間がずっと長くかかってしまうのです。それにリコール(呼び戻し)できない!でも、たった一つ発見したことは、バーチャルなもので作ったサウンドは必ずしも満足できるものではないということです。音の根幹となるクオリティ、それは言葉では表現できない要素ですが、その最後の0.01%は多くのプラグインには存在しないのです。だから私は、その「ちょっとエキストラなもの」ができるプラグインだけを使うよう限定しています。私が使用しているたった一つのバーチャルシンセサイザーは“Zebra” と呼ばれるもので、ドイツ人デザイナー、 Urs Heckman によってつくられました。それはとても柔軟性があり、また音質が優れ、本当に「その音」を持っているのです。

5.17.1ですべてをしているのですか?

すべて5.1でやっています。私の世界が5.1と言っても過言ではないし、その世界をとても気に入っていますよ。私は自分のサウンドトラック アルバムを決して聴きません。なぜって従来のステレオで聴くのが耐えられないからですよ。本当にがっかりさせられますよ。

本物のオーケストラとの仕事の時は、どこでレコーディングをするのですか?

ほとんどは、ここLAにある私のお気に入りスタジオ、SonyかFoxスタジオだ。もしくは、ロンドンにあるAIRスタジオ。AIRスタジオは私の第二の家みたいなものです。

あなたはレコーディングやミキシングにもかかわるのですか?もしくは、演奏者や音楽家としてのみに集中するのですか?

レコーディング中は、プレイヤーやミュージシャンとして集中します。でも、レコーディング前にはエンジニアと楽曲のサウンドコンセプトについてたくさん話し合いますよ。映画の種類によって、私達はマイクの配置を替えたりオーケストラを配置し直したりします。それに、オーケストラのサイズも常に変わりますよ。すべてのプロジェクトは新しい実験みたいなものなのです。

「私はRoland社の“RE-201 Space Echo やその他のローランド社の物も使っています。Space Echoは私の生活必需品のようなものでした。Space Echoで試せば、たちまち素晴らしいく聞こえたものです。そして“Trident A-Range EQプラグ”!もし、音に色味をつけたかったらこれが最適です。スネアドラムなんかとあわせると最高なんですよ。」

そういう秘訣が大好きなんです!最近、私は「シャーロック・ホームズ」を観たばかりで、その映画の最初の導入音楽がとっても気に入りました。

とっても奇抜なやつでしたね。

映画を観ている最中でさえ、「いったい誰がサウンドトラックをつくっているのかしら?」と思いましたよ。

導入部分、映画のタイトルロゴの部分だけど本当に一生懸命取り組みましたよ。基本的に、従来の古い「シャーロック・ホームズ」じゃあないんだということを、すぐわかるような何か違うものを作りたかったのです。雰囲気の決定づけです。この映画(インセプション)では、もっとそれ以上の取り組みだと思いますよ。

私は作曲や新しい映画に取り組む時、どんな音響の世界にするかと同じくらいに楽曲についても考えます。どうやってレコーディングしようか?ミュージシャンは誰か?どうやってこの音をマイクで拾うか?楽曲を書くと同時にこれらすべてを思い付くのです。これが最近の私達の仕事のやり方です。それはもう、紙に書いて作曲し、オーケストラを呼ぶということじゃあないのです。初期の段階にサウンドをはっきりさせ、そしてそれもすべて作曲過程の一部なのです。もし誰かがテクノロジーのおかげで早くできると考えるなら、それはまったくの誤りですよ。これらすべての機器を持ってしても、10倍は長くかかります。映画「ブラックホークダウン」にでてくる「急ぐのかい、それともコンピューターを使うのかい?」みたいなものです。

 

現在は「インセプション」に取り掛かっているのですか?

そうです―我々はその映画について一言も言いませんよ!私たちは秘密主義で働くのが好きなんです。予告篇を観ることはできても、何の映画なのかわからない―これだけは約束しますよ。

あなたの信じられないくらい素晴らしいキャリアの持ち主ですね。

ええ、わかっていますよ。 毎日、自分自身、驚かされているんですから。

一体、何枚UADカードを使っているのですか?

そうだね・・・今、個人的には、私のコンピューターの中にUAD-2のQUADカードのみです。本当によく持ちこたえているし、私の要求をすべてカバーしてくれています。・・・今のところはね。でも、ここでの働き方はスタジオを3つ使って同時に仕事しているようなものですよ。私の部屋、プログラマーの部屋、そして、みんなそれぞれが同じような部屋を持っています。だから、私は実際何人のコンポーザーやアレンジャーが働いているのかまったくわからないのです。

好きなプラグインはなんですか?先ほど“Trident A-Range”を口にされましたけど。

それだけではありません。私には、良い意味でのライバルであるエンジニア、アラン・メイヤーソンがいるけど、彼は私の仕事のやり方を馬鹿にして笑うんですよ。でも私は何年もの間、ドラム音をとる時は古い“dbx160コンプレッサー”を使っています。だから、君たちが“VCA VU コンプレッサー・プラグイン”を出した時、本当にうれしかったよ。それと、私はNeve社製品にとても慣れているので、“Neve プラグイン”をすべてに使っています。私たちはNeve社 から買ったセットの他に、24チャンネルのハードウェア1081を持っています。プラグインを使っているけど、本当にそれほど違いがありませんね。

私はRoland社の“RE-201 Space Echo” やそのほかのローランド社製品も使っています。(Space Echoは)私の生活必需品のようなものでした。Space Echoで試せば、たちまち素晴らしいく聞こえたものですよ。そして、“Trident A-Range EQプラグ”。もし、本当に音を特色づけたかったら、これが最適です。スネアドラムなどにあわせると最高なんですよ。 “Harrison 32C EQ”にも同じことが言えます。ただポーンと押せば、本当に最高のできになるんです。EMTプレートはすべてに使っています。もちろん、ごまかしているよ。だって私は雰囲気を作り出すために、プレートを2つ使っているのです。素晴らしいよ。プレートを使い果たすことがない感覚なんですよ。

そして、もちろん新しい“Manley Massive Passive EQ プラグイン”だ。 私達のところには6つ、ハードウェアのManley Massive Passive があります。今はちょっとわびしい感じに見えますけどね。

Vintage Universal Audioハードウェアを使った経験がたくさんありますか?

もちろんですよ。LA-2Aと1176LNはすべてのスタジオにあって、毎日のように使っていました。私は今でも使っていますよ。でも、今はもうちょっと歯ごたえのある物が好きなんです。つまり、君たちのVCAコンプレッサーだよ。私はそういうのがとても好きなんです。

 FATSOプラグイン”を試したことがありますか?

ええ。FATSOはよく使っていますよ。本当に素晴らしい。つい昨日も、この映画の為に電子ドラムを使って、いろいろ試したところです。私はただ、少し艶のある音にしたかったのです。だからテープエミュレーションのFATSOはそれにもってこいでしたよ


私はUA社も私と同じ倫理観があると感じました。彼らは表面に現れない部分(深層)を、どうやって聴きだすのかをわかっています。だから、彼らの商品は、いい音を出すんですよ。

 

 Neveプラグイン” はどうですか?

いつもすべてに使っていますよ。コンプレッサー、EQ,1081と1073はそれぞれ異なって聞こえます。そして、これらのヴィンテージなものをひとつのコンソールに収納していることは、本当に素晴らしいです。時々、たくさんEQをダイヤルしないで、ただ取り出して使います。それは音を特徴づけ、良いようにひとつにまとまるんです。単に私がノスタルジーなのかもしれませんが、でも、私にはどんな音になるかはわかっています。私にとって、すべてを包容し、そこから新しく始めるのはとても簡単なことなのです。

正直に言って、私はめったにこの手のインタビューは受けないけど、Universal Audio 社の君たちがやっていることは、他の誰にもできないことです。本当に信じられないくらい役立っていて、それにまったく並外れていますよ。

ほんとうにうれしいです。

今後懸念しているのは、あなた方が聞く耳を持っているかということなんです。

もちろん!UAには、素晴らしい耳をもっている人が何人もいますよ!お客様の言う事に耳を傾けるのは、我々のビジネスにおいてとても重要なのです。

そのとおり。それは、まったく、私がどうやって音楽に行き着いたかと同じです。私は正式な音楽の教育を受けていません。 でも、シンセサイザーのプログラマーとなり、その当時何度も弦楽器の音をまねたり、オーボエの音を作ったりするよう言われ、それが私の聴力を鋭くしました。本当に、音をよく聴きこまなくてはならなかったのです。 だから、私はUA社も私と同じ倫理観があると感じました。彼らは本当にどうやって表面に現れない部分(深層)を聴きだすのかをわかっています。だから、かれらの商品はいい音を出すんですよ。